今年4月に歴代最年少で市長職に当選したことが大きく報じられた兵庫県芦屋市長・高島崚輔(りょうすけ)氏。その高島氏を招いたイベントが駒場祭で行われる。企画団体は東大内のゼミ「瀧本ゼミ政策分析パート」だ。高島氏に対し、同ゼミは政策提言を行う。担当者の伊丹裕貴さん(文Ⅰ・2年)と東真優さん(理Ⅰ・1年)に企画の見どころや政策提言の概要について聞いた。(取材・高橋潤)(画像は全て瀧本ゼミ政策分析パートの提供)
高島市長への公開提言 関心寄せる二つの政策とは
企画は瀧本ゼミ政策分析パートが、ゼミ内で立案した政策をイベント内で高島市長に対し提案するもの。伊丹さんによると、市長の施政方針に鑑みて、ゼミの活動に共感を示してくれるのではないかと考えたことが高島市長を招くことを決めた主な理由だ。さらに、市長はかつて日本語ディベートに携わっていたといい、日本語ディベートの普及に従事した故・瀧本哲史氏を発祥とする同ゼミは活動への協力を仰ぐことにした。
ゼミからは「脱水症の予防」と「児童への養育費をめぐる問題」についての政策提言を行う。市長次第で芦屋市政にも生かされる可能性があるという。また、参加者が高島市長に対して政策に関する質問や討議などを行えるフリートークがかなりの時間を割いて行われる。市長へ直接に質問を投げ掛けられるのが本企画の大きな魅力だ。
今回提言が行われる2政策は、高島市長が現在の芦屋市政で力点を置くと見られる施政方針に関わっている。高島市長は子育て・教育支援に関する政策や高齢者向けの予防医療施策を進める姿勢を見せており、ゼミが提出する政策は、少なからず関心を持ってもらえるだろうと伊丹さんは話す。「芦屋市で実際に導入してもらうことを目指して、政策に磨きをかけています」
政策提言の具体的な部分について、伊丹さんたちは「かくれ脱水」という状態に注目した。これは熱中症の前段階であり、実に日本の高齢者の約2割が「かくれ脱水」に該当していると言う。水分補給の不足は、熱中症だけでなく心筋梗塞などにつながる恐れもある。今回のイベントでは「かくれ脱水」の状態にある人を7割程度削減する施策を提出するとのことだ。養育費の問題に関しては、シングルマザーの貧困率に着目した。シングルマザーの平均収入はシングルファザーの場合と比べて低い傾向にある。同ゼミは、この一因が十分に養育費を確保できていないことにあると分析する。また、親権者間での養育費のやり取りには企業や公的機関が仲介しているものの、企業は仲介への保証に乏しく撤退傾向にあり、公的機関は制度の不備などからニーズを満たせないことがままあるという。
「机上の空論では意味がない」重視される「提言」とは
同企画のように、立案した政策を現場の政治家まで提出するというのが、瀧本ゼミ政策分析パートの特徴だ。現実に生かすための「提言」を同ゼミでは重要視している。「どれほど良い政策であっても提言する部分まで考えなければ、実現可能性のないものに落ち着いてしまう」と東さんは言う。そのため、政治家の施政方針や個々の自治体の行政の状況なども常に考慮している。政策は個人によるリサーチと週ごとのフィードバックを重ねながら、半年のスパンで、問題の内因性・重要性・解決性・新規性という四つの基軸によって練っていく。政策を立案する際には、実際に足を運んで当事者や関係者に話を聞くという。「デスクトップリサーチだけでは間違っていることも多い」と東さんは話す。
今回の駒場祭企画も、この手順を踏んで練られた。「大学生が政策の立案・提言というプロセスを通して、社会を変えようとしているという活動を知ってほしい」と伊丹さんは意気込みを語る。「そうした活動をオープンに見られるのは、めったにない機会だと思います」。また、高島市長が大学などでこうしたイベントに出席するのは初めてのことだという。「社会を学生からも大きく変えたい」と言う瀧本ゼミ政策分析パートの同企画に、足を運んでみてはいかがだろうか。
【開催概要】
本企画のお申し込みはこちらのフォームから事前予約、または当日整理券です。
主催:瀧本ゼミ政策分析パート
日時:11月25日(土)12:00ー14:00
会場:駒場キャンパス1313教室
入場料:無料
MAIL:tsemi.seisaku@gmail.com
Instagram/Twitter:@utokyosusnet
【高島崚輔さんインタビュー】
東大新聞は2018年に【蹴られる東大】と言う企画で高島崚輔さんにインタビューを行いました。合わせてご覧ください。