あなたはある部屋に閉じ込められてしまった!
「謎解き」をしながら、部屋に隠されたアイテムや仕掛けを駆使して、脱出せよ。元々はウェブページ上のゲームだった「脱出ゲーム」。この謎解きの要素を、現実世界で再現しようというイベントが最近はやっている。2012年に設立された謎解き制作団体 AnotherVisionを取材した。
この日は、イベントの予行に参加させてもらった。部員10人ほどに続けて、予行を運営する部員たちが入って来る。謎が印刷された紙を壁や黒板に貼り、アイテムを封筒に詰め――部屋がイベント会場に様変わりし、期待感が募る。
準備の間、代表の佐々木翼さん(工・4年)に謎解きの特徴を聞いた。使われる「謎」は、ヒントに「タヌキ」とあったら「た」の文字を抜いて読むなど、なぞなぞの感覚に近い。「クイズとの違いは、特別な知識が不要なことです」と佐々木さん。
制作するときも「中学生でも分かる」範囲に限定しているという。「りんご」が「Apple」なのは使っても良いが、元素記号の知識を前提としてはいけない、という具合だ。
「謎解きイベント」は、次々と謎を解きながら、「脱出」などの目的達成を目指す。謎は複雑に絡み合い、その仕掛けが解けると、隠れたヒントが見えてくる。全ての仕掛けが分かると、伏線の張られた映画の真の意図が分かったときのような感動がこみ上げるのだ。
「解けなかった人でも、解説を聞けば『自分でも頑張れば解けたのに』という悔しさから、きっとまた挑戦したくなりますよ」 自分で頭を使って脱出するなど、お客さんが「主人公」としてその世界観に没入できることが魅力。その演出のために、ヒントの出し方までも徹底的にこだわる。複雑なヒントを出されると「命令されている」印象を受けてしまう。「簡潔な文章で指示が書かれているのが美しいヒントです」。例えば「頭を使って読め」というヒントで、暗号の頭文字を抽出させることを暗に示す、などだ。
さて、予行の準備が整い、記者も参加して4人一組に分かれてゲーム開始。謎が書かれた紙がたくさん入った封筒が渡される。部員は素早く全てに目を通し、解けそうな問題からどんどん解いて行く。今回の制限時間は30分。30個以上も用意された謎を解くにはかなり短く感じた。部員が次々と解き進める中、記者も何とか2、3問は貢献。
しかし、最後の謎のヒントが分かったところで、時間オーバー。 「あとちょっとで解けたのに」の悔しさを味わいつつ、解説を聞くと、実は他にも気づいていなかったヒントが!全ての仕掛けにすっきりと納得がいった。 今回のイベントは来春に都内で公演予定。周到に準備された謎解きの美しさに感動しに行こう。
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【サークル紹介】
サークルや部活動について、東京大学新聞オンラインで紹介したい方は np@utnp.org までご連絡ください。 2014年1月1日発行号に掲載(所属などの情報は当時のものです)