第2786号(2016年12月20日発行号)・第2787号(2017年1月1日発行号)で、多方面への取材を基に「総合図書館は実質的な閉館を工事開始当初から想定していた」と報道しました。この報道に関する本部広報課の見解を、1月10日に「閉館に反対する学生の会」が公開しました。本部広報課へ実際の見解か確認をした結果、東大は何らかの「利用制限」は工事当初から想定していたが、実質的な閉館といえる大規模な制限を想定していたとまではいえないことが分かりました。おわびして訂正します。
報道に至る経緯
総合図書館本館の利用制限について、東京大学新聞社は本部広報課へメールで取材を行いました。12月9日に1回目の回答を得、その中で工事の時期に関する以下のようなやり取りがなされました。
――「閉館に反対する学生の会」がTwitter(https://twitter.com/heihankai/status/801939831404142592)で公開した内部資料では、「数度にかけて順次実施する予定だったⅢ-1・2・3期の工事が補正予算の措置により同時進行することになった」とされているが、この情報について何か知っていることはあるか。また、文科省が10月に公開した2016年度補正予算では、3月の本予算に比べ東大の「施設整備費補助金」が約14億円増額されているが、こちらとは何か関係があるのか
Ⅲ-2期工事については、平成29年度概算要求に計上されていましたが、安全対策として平成28年度第2次補正予算により本年10月に予算化されたためです。しかしながら、予算化が5ヶ月早まったことで、急に「建物使用制限」にすることになったわけではなく、今年度Ⅲ期-1工事を着手していることから、工事が本格化する29年度は「建物使用制限」がもとより必要でした。
1回目で得た回答に関して、弊紙はメールによる取材を追加で行いました。そして同月14日、利用制限の必要性について以下のような回答を得ました。
――「予算化が5ヶ月早まったことで、急に『建物使用制限』にすることになったわけではなく、今年度Ⅲ期-1工事を着手していることから、工事が本格化する29年度は『建物使用制限』がもとより必要でした」との回答について
①Ⅲ-2期の工事が2016年度補正予算で予算化されたことは、勉強・閲覧スペースや開架資料・書庫資料の利用制限の程度などについて、元々の工期で想定されていた使用制限にどのような影響を与えたのか
②いつごろから「建物の利用制限が必要」だと認識されていたのか
③「工事が本格化する29年度は『建物使用制限』がもとより必要でした」と認識されていたのに、工期決定の11月末を待って代替措置の検討を始めたのにはどのような理由があるのか
①Ⅲ-2期の予算化自体は、使用制限に影響を与えてはおりません。
②建物の利用制限は、Ⅲ-2期の予算化以前にもすでに始まっており、その都度お知らせしてきました。今回の措置は一連の利用制限のなかでも特に規模が大きかったということです。工事の最初から「建物の利用制限が必要」との認識はありました。
③代替措置は、11月末からではなく、工事の最初から検討していました。
――Ⅲ-2期の工期は、なぜⅢ-1期の工事日程と重なり1年間総合図書館が利用できなくなる日程で決まったのか。また、工期はいつごろ、どの組織が決定したのか。また、その際学生・教員への影響と代替措置についてはどのように考えられていたのか
Ⅲ-1期の工事とⅢ-2期の工事は、当初より重なるものと考えていました。このため、これの工事に伴う利用者への影響や代替措置について、図書館としても検討を進めてきました。
「①Ⅲ-2期の予算化自体は、使用制限に影響を与えてはおりません」「Ⅲ-1期の工事とⅢ-2期の工事は、当初より重なるものと考えていました。このため、これの工事に伴う利用者への影響や代替措置について、図書館としても検討を進めてきました」との回答から弊紙は、予算化以前から想定されていたという利用制限が、耐震改修工事Ⅲ-2期が決定したことが原因として11月に示された、実質的な閉館といえる大規模な利用制限だと認識しました。また「工事の最初から『建物の利用制限が必要』との認識はありました」との回答から、1回目の回答にあった「もとより必要でした」の「もとより」が工事開始の当初までさかのぼれると認識しました。
また、図書館の重要事項を決定する「図書行政商議会」の関係者への取材で得た「実質的な閉館は既定路線で話が進んでいた」という回答なども後押しとなりました。以上の多面的な取材を基に、弊紙は「東大は実質的な閉館を工事開始当初から想定していた」と判断し、12月20日・1月1日発行の弊紙で報道しました。
訂正に至る経緯
しかし報道直後の12月20日、「閉館に反対する学生の会」は「『利用制限』『使用制限』がそれぞれどの段階を指し示しているのか、曖昧なままであり、これを『閉館』とまで呼んでしまうのは、少なくともこの紙面に出ている情報からでは、難しいように思える」などとコメントし、誤報ではないかという指摘をしました。1月11日には、弊紙報道に関する以下のような本部広報課の回答を公開しました。
>「使用制限」が行われるかどうかということそのものには工事計画の変更は影響していない(が、もともと現在そうであるような一部の使用制限であったものが、より重大な使用制限に拡大された)
上記にあたると考えております。
今回の耐震改修工事は、総合図書館全館にわたるもので、当初から何らかの「使用制限」を行う予定でしたし、すでにこれまでにも「使用制限」を実施しております。したがいまして、工事計画の変更は「使用制限」を行うかどうかということそのものに影響を与えてはおりません。
もともと何らかの「使用制限」を行うことになっていたものが、工事計画の変更にあわせて、告知の時期や「使用制限」の範囲を再検討した、ということになります。
弊紙はこの回答を受け、本部広報課へこの回答が実際の回答かを確認しました。結果、東大が工事開始当初から想定していたという図書館の「建物利用制限」は「何らかの利用制限は必要だった」程度の意味に過ぎず、「工事開始当初から実質的な閉館を想定していた」という弊紙の報道は過剰な解釈であったことが判明しました。
この度は弊紙の確認不足から誤った報道をし、大変申し訳ございませんでした。再発防止に努め、正確な報道を徹底していきます。