学術ニュース

2024年7月13日

アルツハイマー病に対する触媒医療につながる低副作用の触媒を開発

 金井求教授、富田泰輔教授(共に東大大学院薬学系研究科)らの研究グループは、アルツハイマー病モデルマウスの脳内で毒性を持つアミロイド(凝集体)を分解する触媒を開発し、それに水素原子を1個付けることで脳内への移行性を高め副作用を抑えることに成功した。

 

 アルツハイマー病は、アミノ酸がペプチド結合で連なった分子であるAβがアミロイドを形成し、脳内に蓄積することと関連して発症すると考えられている。研究グループは極少量でアミロイドの分解と低毒化を促進する分子EVを開発した。EVは従来のアミロイド分解の触媒より活性が200倍高く、低分子で、生産と品質管理が容易で安価だ。

 

 しかし、EVの欠点として、静脈注射によって投与しても脳内に移行しにくく、副作用が強い点が挙げられる。そこで研究グループはEVに水素原子を1個付け加えたLEVを開発。LEVにアミロイドの存在下でオレンジ光を照射すると、EVに変換される。アルツハイマー病モデルマウスにLEVを静脈注射すると効果的に脳内に移行し、頭部へのオレンジ光の照射を繰り返すと、副作用を起こさずにアミロイドを分解した。さらに、LEVはヒトアルツハイマー病患者の脳由来のアミロイドに対しても効果的に作用することが確認できた。

 

 この成果はアルツハイマー病を克服する薬の開発につながると期待される。

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