東大は12月11日、東京大学基金特別セミナー2024「赤門とは何か―歴史と建築の視点から」を開催した。セミナーは東大基金に開設された赤門の修繕プロジェクトの関連イベントとして開かれ、講演と座談会をオンラインで配信。YouTube上での同時視聴は約100人に上った。
最初の講演では松田陽准教授(東大大学院人文社会系研究科)が、赤門の「軌跡と奇跡」を歴史的見地から解説。溶姫(江戸幕府第11代将軍徳川家斉の21女)の嫁入りに伴う創建以来、赤門が関東大震災や戦争などの危機を乗り越えてきたことを紹介した。空襲により赤門周辺で火災が発生した際には、建築科の学生がバケツリレーで焼失の危機から赤門を守ったというエピソードも。本郷周辺のシンボルとして奇跡的に現存し、さまざまな思いを紡ぎ続ける赤門の魅力について語った。
続いて、寄付金を活用した赤門周辺エリアの環境整備について、千葉学教授(東大大学院工学系研究科)が講演。赤門の耐震工事に加え、付近で出土した加賀藩邸の遺構を展示する施設を作るという。コミュニケーションセンター前に展示空間を覆う形で設置されるひさしについて、デザイン案を複数提示し、寄付総額に応じて適切な案を実現すると明かした。赤門から医学部2号館本館に続く通りにも注目。現在のアスファルト舗装を改め、正門から安田講堂までのイチョウ並木と同様に御影石を用いた石畳とする予定だ。
津田敦理事・副学長と司会の加藤耕一教授(東大大学院工学系研究科)を交えた座談会が開かれた。東大は150周年記念事業「ひらけ!赤門プロジェクト」を2024年10月から始動している。同年12月の寄付月間(寄付文化の振興を図る全国キャンペーン)に合わせ、セミナーの最後にプロジェクトへの寄付を呼び掛けた。
セミナー終了後には記者説明会を開催。加藤教授 は東大入学にも例えられる「赤門をくぐる」経験がないまま卒業せざるを得ない現状に言及し、一刻も早い開門を願った。目標金額10億円のところ、24年12月現在の寄付総額は3000万円。津田理事は卒業生に一番応援してほしいと語った。