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2025年1月1日

【謹賀新年】 読者の皆様へ

 

 明けましておめでとうございます。旧年中は『東京大学新聞』をご愛読いただき誠にありがとうございました。2024年の東大を振り返ってみると、まさに「激動」の1年でした。藤井輝夫総長の任期も4月で残り3年となり、折り返しを迎えました。就任年に公表した活動指針「UTokyo Compass」を増補した「UTokyo Compass2.0」を5月に発表するとともに、複雑化する社会の中で、自律的かつ創造的な大学活動を目指した決意表明が改めてなされました。そして、5月に案が公表され9月に正式に決定がなされた東大の授業料値上げについては、学内外を問わず大きな話題となりました。来年度の学部入学生からは、現状の53万5800円の授業料(年間)から約10万円値上げされた64万2960円が適用されます。学内では一部の学生団体が五月祭でデモを起こすなど、「学費値上げ反対運動」も目立ちました。

 

 昨年はまた、学生の活躍が目覚ましい1年でもありました。硬式野球部(東京六大学野球)は秋季リーグ戦にて7年ぶりとなるシーズン2勝をあげました。東大ラクロス部女子は長年目標としてきた「1部リーグ昇格」を達成し、東大アメリカンフットボール部(関東学生1部上位リーグTOP8)も4連勝を成し遂げ、TOP8昇格後初めてシーズンを勝ち越しで終えました。

 

 東大新聞としても、先述した東大の授業料値上げについて継続的に報じ、ニュースサイト「東大新聞オンライン」を中心とした速報に注力しました。値上げ決定後の10月号では、「学費問題&法人化20周年特集」を組み、背景にある東大の法人化にまで踏み込んだ記事を掲載しました。しかし、今回の「学費問題」は東大新聞の存在意義を改めて考えさせられる契機でもありました。東大新聞が理念の一つに掲げる「東大構成員のハブコミュニティ」とは、「東大についての情報を知りたいとき、また情報を発信したいときの媒体として第1候補となる」ことを意味します。新聞に限らず、メディアの役割として「多様な声を拾い上げ、社会に届ける」ことは欠かせないことであると認識します。しかし、学費問題に対する報道姿勢を振り返ってみると、当局や活動的な学生団体への取材が中心でした。記事の中で東大の多様な構成員の声をどこまで拾い上げられていたのかについては、よく考え今後の自戒とせねばなりません。また「届ける」という面においても、学費問題に関する「東大新聞オンライン」での反響は大きかったとはいえず、まだまだ発信力・発信方法が十分とは言えないでしょう。一方で、こうした問題意識を踏まえて4年ぶりとなる「社説」の掲載や、号外である「東大新聞ミニ」の刊行といった新たな挑戦も始まりました。東大が大きく変革を遂げていく2024年は、東京大学新聞社にとっても「転換」と「挑戦」の1年となりました。

 

 2025年は授業料の値上げや学部入試における第1段階選抜の実施倍率の引き下げ(一般選抜、理III以外)が行われます。東大はこれらの変更について入学志願者の準備に大きな影響を及ぼすことないとしていますが、これらの変更が及ぼした影響について、東大新聞には検証していく責務があります。東大新聞としても、本年は月刊化5年目を迎える節目の年です。東大新聞かがこの先5年、10年と淘汰(とうた)されずに存続していくためには、もはやこれまで通りではいけません。25年をさらなる「躍進」の年にするには、これまで以上の挑戦が欠かせないでしょう。東大を飛び出して社会全体に目を向けると、SNSが普及する一方、新聞業界は衰退の一途をたどっています。SNSはAIによるおすすめ機能によりユーザーに最適な情報が届けられるため、多様な情報を広く扱う新聞よりもユーザーは心地よい使用感を得られることでしょう。しかし、言い換えるとSNSはユーザーに都合の良い偏った情報しか手に入らないという危険性をはらみます。情報化が進み複雑化していく社会を生きていく上で、雑多な情報が掲載される新聞を読むことは、社会の全体像を捉えて自身を相対化する助けとなります。そこに新聞というメディアの価値があるのではないでしょうか。メディアとしての新聞は決してSNSに劣るものではないはずです。月刊の学生新聞である東大新聞が存続していくためも、まずは編集部全体でその価値を認識して、その意義を考えていかねばなりません。東大新聞は、「東大を動かすメディア」「東大構成員のハブコミュニティ」「東大の知をひらく」の三つを理念に掲げ、「多様な声を拾い上げ、社会に届ける」責務を全うしていく所存です。東大に基盤を置きながらも、東大本部とは組織的・人的・財政的に独立していることは、他のメディアにはない特長であり、強みであると自負しています。今の東大に生きる編集部員の情熱が反映された、東大新聞にしかできない紙面作りにまい進し、東大新聞が読者の皆さまにとって価値あるメディアであり続けられるようより一層励んでまいります。

 

 読者の皆さまにおかれましては、本年中も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

2025年 元旦

『東京大学新聞』編集長 赤津郁海(文Ⅲ・2年)

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