心臓突然死で、年間7万人が亡くなっています。これは一日当たり200人弱の人が亡くなっている事になります。貴方の家族・友人も心臓突然死で亡くなる可能性があります。心臓突然死とは、「急性の症状が発症した後、1時間以内に突然意識喪失を来たす心臓に起因する内因死」で、予測ができません。なので、発生してからどう対応するか、が重要になります。
PUSHプロジェクト あなたにしか救えない大切な命 でもいつ遭遇するかわからない心臓突然死ついて取り上げています。
その上で、貴方や貴方の大切な人の命を救う可能性があるのがAEDです。
AEDは正常に拍動できなくなった心停止状態の心臓に対して、電気ショック(除細動と言います)を与えます。これにより、心臓を正常なリズムに戻す事を助けます。AEDの操作は簡単で、一般市民でも使用可能です。AEDが使用出来る状態かどうかはAEDが自動で判断してくれます。
AEDとはこんな器械です。
なぜ、市民によるAEDの使用が重要かと言いますと、心停止状態では、除細動(AEDによる電気ショック)をするタイミングが1分遅くなる毎に生存率が10%下がっていきます。とにかく早い除細動が重要なのです。日本の救急車の平均到着時間は約8分なので、その時点での生存率は20%です。つまり、救急車が到着するのを待つのではなく、その場にいる人がAEDを使えれば、生存確率はぐっと上がるのです。
(AHA 心臓蘇生救急心血管治療のための国際ガイドライン 2,000より瀧本ゼミが作成)
実際に、AEDの使用により、使われなかった人と比べて、なんと生存退院率は4倍以上にもなります。(出典:総務省消防庁 平成25年度 救助救急の概要 救急編)
この器機は医療界の要請もあり、2004年から一般市民への導入が始まり、今日7月1日が丁度導入10周年になります。今では日本全国30万台以上が配備され、緊急時はいつでも使えるようになっています。
AEDと心肺蘇生の方法についてはこちら
【日本赤十字社】一次救命処置(BLS)~心肺蘇生とAED~
しかし、ここで残念なお知らせがあります。
AEDは日本ではほとんどと言っていい程、一般市民によっては、使われてません。日本で2012年に心停止時点を目撃された総数(23,797件)のうち3.7%(881件)しか市民が使用した例はありません。目撃されているのに、ほとんどの人がAEDによる処置が行われていないのです。AEDが使われない場合、生存率は10%ほどになってしまいます。つまり、表題にもある通り、現状では病院外で心停止になるとほとんど助かりません。運良く3.7%に入らない限りは。貴方の家族や友人、貴方自身も病院外で心停止になったら、ほとんど助からないと言って良いでしょう。
日本全体で見ても、(AEDが適応ではなかった人も含むので、簡単に断言する事はできませんが)先ほどの生存率から比例的に数字を出せば、AEDは更に「年間数千人」を助けるポテンシャルを持っていると言えます。AEDが使えなかった事例として、このような事件も最近起こっています。AEDがあれば、助けられたかも知れない、そう考えると痛ましいです。
AEDは…心臓病の野球部員グラウンドで倒れる 読売新聞 6月20日
(この件に関しては次回詳しく取り上げる予定です。今後も似たような事例は発生すると考えられます。)
AEDに関して、学生がリサーチを行うだけでも多くの問題が出てきます。様々な所へインタビューや交渉にも行きましたが、中々行政が動けない現状もあるようです。私たちだけでは、動きの広まりには限界があります。なので、皆さんにも協力頂けると嬉しく思います。まずはこの事実を広めて貰う、この記事をシェアするだけでも、人の命を救う事に繋がります。
より多くの人にAEDのことを知って貰い、より多くの命を救うことに繋げる為に、この問題について、今後も継続的に発信していきます。皆様にまたお願いする事もあるかもしれません。どうすれば、目の前にいる人や家族・友人を助けられるのか。AEDを使えるようにするにはどうすれば良いのか。知るだけでも、大切な人の命を救う事に繋がります。どうか今後とも宜しくお願いいたします。
慶應大学医学部4年 石橋由基
※この記事は、シンクタンク瀧本ゼミAED推進パートからの転載です。