キャンパスライフ

2021年5月21日

【東大→海外大学院という選択】②宇宙開発の最前線で働くため渡米を決意! 河野麗さん(東大工学部→ペンシルバニア大学Ph.D. course)

 こんにちは。河野麗(こうの・うらら)と申します。2017年4月に東京大学理科2類に入学し、21年3月に東京大学工学部電気電子工学科を卒業しました。現在東京大学工学系研究科電気系工学専攻修士1年で、21年9月にペンシルベニア大学Electrical and Systems Engineeringの博士課程(Ph.D. course)に進学します。船井科学振興財団に授業料や生活費等を支援していただきます。1年前、東大新聞の「キャンパスのひと」で取材を受けました(【キャンパスのひと】河野麗(こうの・うらら)さん(工・4年))。

 

 

コロナで交換留学が中止、そして出願の決意

 

 大学3年のSセメスターに参加した工学部航空宇宙学科のARLISSというプロジェクトで、アメリカの砂漠に行って自分たちで作った飛行機をロケットから飛ばしました。苦労して自分たちが作ったものが遠い空で動いたことに非常に感動し、それ以来、将来は実際の宇宙ミッションで自分の手がけたものを動かしたいと思うようになりました。

 

 そのプロジェクトの後、NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory, JPL)に行って、そこで働く日本人研究者の方々とお話する機会がありました。私も将来JPLのような、宇宙開発の最前線で働きたいと伝えると、アメリカで博士号を取ると良いよと勧められ、以降アメリカの大学院に進学することを真剣に考え始めました。

 

 アメリカから帰国して、まず学部の間に交換留学をしようと思い、工学部によるカリフォルニア大学交換留学プログラムに応募しました。4年生の秋から1年間カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に留学できることが決まりました。さらにカーネギーメロン大学のロボット研究所が行っているインターンシップにも応募し、4年生の夏に2カ月間参加することとなりました。

 

 アメリカへの留学が二つも控え、ワクワクしていた矢先、新型コロナウイルスのパンデミックが到来。研究経験を積む絶好の機会だと思っていたのに、次第に悪化する状況に不安が増していきました。最悪両方中止になったら、学部からアメリカの大学院Ph.D.に出願するにはあまりにも何も材料がないし大変だから、修士を日本で取得してから出願しようと思い、東大の工学系研究科修士課程に出願しました。その後、カーネギーメロン大学でのインターンシップはフルオンライン、UCLAへの留学も20年5月末時点で、秋学期の中止が言い渡されました。その時点では冬学期から留学できる可能性も示唆されていましたが、7月になってアメリカで感染者が指数関数的に増加している報道をみて、これは冬からの留学も無理だろう、と思いました。これと時を同じくして学部から直接海外大学院のPh.D.に出願した方の話を聞く機会がありました。学部4年で出願してどこか一つでも合格できればラッキーだ、その可能性を諦めて2年間も待つのはもったいない、と考え方が変わり、学部4年での出願を決意。全落ちする可能性も十分考えられたので、東大の院試も受けました。しばらくして交換留学は冬学期も中止との通知が来ました。

 

何事も早く動き始めるのが吉

 

 私は受験年度の7月に出願を決意したので、あらゆるスケジューリングが他の人よりも遅く動き始めていることに留意してください。また出願締め切りの時期は大学・専攻によって異なるので、自分でしっかり確認してください。何事も早く動き始めるのが吉です。一方で私のように遅く動き始めてなんとか間に合った人間もいるので、あまり不安にならないようにしましょう。

 

 

 奨学金の申請でも、大学院出願でも、推薦状が一番大事な書類です(特に学部から直接Ph.D.出願の場合)。無駄な美辞麗句をなくし、具体的・定量的な評価(卒論生でこの学会に出すのは◯年で◯人、提案手法によって精度を◯%向上したなど)を書いてもらうことが大事です。これから出す予定の学会についても書いていただきました。推薦状の書き方については米国大学院学生会のニュースレターのこちらの記事を参考にしました。

 

 多くの大学が推薦状を3通必要としています。私は卒論の指導教官2人と3年次に先ほど述べたARLISSでお世話になった先生の計3人に書いていただきました。


 出願ではメンタル面で一番苦労しました。具体例を挙げると

 

・実績も全然無い中で出願して受かるのだろうかという不安が常にありました。

・動き出したのが遅かったため、研究室の先生へのコンタクトがこんな遅い時期になってしまって大丈夫だろうかなどと考えました。

・加えて、海外の先生にメールを送ること自体緊張しました。

・Twitterで1月頃からアメリカの大学院Ph.D.に合格したというツイートが複数目に入ってきて、非常に不安になりました。その時点で私はまだ一つも合格がなかったためです。(私は最初の合格を2月上旬にカーネギーメロン大学からいただきました。)

 以上のことは、出願する多くの人が感じることではないかと思います。誰もが通る道と思って、あまり気負い過ぎないようにしましょう。

 

 また、出願と研究を並行して進めるのがとても大変でした。学部から直接Ph.D.出願でも、一番見られるのは研究実績です。研究を頑張らないと、推薦状で書いてもらえる内容もありません。当たり前ですが、研究を一番頑張りましょう。

 

 逆にうまく行ったと思う点は以下の通りです。

 

・4年生の6月にTOEFLを受験したら102点でした。100点以上とればトップスクールの足切りにも合わない・TOEFLより研究を進めることの方が大事なので以降は受験しませんでした。出願準備の最中にTOEFL対策が必要なかったのがせめてもの救いだったと思います。TOEFL対策は3年生の秋に東大工学系研究科の国際教育プロブラム部門が提供しているプログラム「スペシャル・イングリッシュ・レッスン」を受講しました。

・コロナ対応でほとんどの大学院がGREスコアの提出をoptionalか不要としていたので、一応受験はしましたがほぼ勉強しませんでした。

・10月末に国際学会にfirst authorとして論文をsubmitし、その旨を数日後にあった船井財団の面接で伝えることができました。
・船井財団に採択されたことで、非常に優位になりました。奨学金は体力のあるかぎりできるだけたくさん応募しましょう。私は動き始めたのが遅かったせいで出せなかった奨学金がいくつかありました。5つの財団に応募し、書類を通過したのは2つでした。船井財団から合格を頂き、もう一つの面接に呼ばれていた財団の選考は辞退しました。

 

 最終的に、4つの大学院(うち一つは修士)から合格をいただきました。ペンシルベニア大学のGRASPというロボティクスで世界最高峰の研究グループから合格を頂き、進学を決めました。

 

自ら積極的に情報収集を

 

 海外大学院は情報収集がとても大事です。XPLANEというサイトに色々な情報が載っているのでぜひチェックしましょう。XPLANEのSlackグループで質問や相談ができます。Twitterで海外Ph.D.学生が結構情報発信してたりするのでたくさんフォローしておくと良いでしょう。私のTwitterは@Urara_upennです。

 

 また米国大学院学生会が年に2回、複数の大学で海外大学院留学説明会を開いていますので、ぜひ参加してください。東大ではオンラインで7/11(日)13-15時に開催予定です。さまざまな研究分野から海外Ph.D.学生をお呼びして留学体験談を語っていただきます。また、この東大での留学説明会の他、海外大学院出願全般に関する説明を行う受験総合編も、7月に開催予定です。詳細は学生会のウェブサイトTwitterアカウントでチェックしてみてください!

 

 

【関連記事】

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