進学選択

2022年6月25日

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(教育学部・教養学部編)

 

 6月から手続きが始まる進学選択。後期課程のイメージができず、志望先を決めかねている2年生も多いだろう。本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。4年生が経験した3S1タームと3A1タームの時間割も掲載している。進学先決定の一助としてほしい。(構成・石橋咲、佐藤健、取材・髙橋賢司、川端萌、佐藤健)

 

理Ⅱ→教育学部教育心理学コース

 

早期からの実践的教育、多様な進路

 

四元花音(よつもと・かのん)さん

 

 理Ⅱ出身の四元さん。入学当初は教職の他、一般企業への就職も視野に入っていたという。数学好きで理学部数学科への進学を考えていた。

 

 志望を変えたきっかけは1Sセメスターに教職課程で履修した「教育心理I」の授業。自分の関心が数学自体よりも数学をどうすれば分かりやすく教えられるかにあると気付いた。総合科目でも心理に関する授業を積極的に受講し自らの心理学への興味を確認、文転し教育学部教育心理学コースへ進学することを決意したという。

 

 教育心理学コースは心理学の手法や知見を身に付けた人材の育成を目指す。進学選択直後の2Aセメスターから3Aセメスターにかけて「教育心理学実験演習」が実施される。教育心理学の研究に必要なノウハウを身に付けられる授業であり、性格検査や、企画から分析まで学生主体で行う質問紙調査の実習などにも取り組む。四元さんはこの授業について「一番面白かった」「卒論を書くのに役立つ」と語った。

 

 コース内の雰囲気は「穏やかな人が多く、和気あいあいとした感じ」。新型コロナウイルス感染拡大の中ではZoomをつなげてゲーム、感染が落ち着いた頃には食事会やボウリングを行うなど交流は盛んだ。教員も「優しい方が多いです」。ある教員はオンライン授業で学生間の交流が減ったことを懸念して、授業後にブレイクアウトルームで学生の交流場所を提供していたという。

 

 教育心理学コースでは約3分の1が大学院に進学し、残りは就職する(2020年度)。教員免許や公認心理師の資格を取得する進路もあるが、就職先は教育関係に集中しているわけではなく、国家公務、情報通信、サービス業と多様だ。「人の行動や成長についての心理学的見地からの知見、統計学の知識は幅広い業種で生かせると思います」

 

 心理学を志す学生に向けては「心理学では統計を多く用いるため、統計学に苦手意識がある人は『基礎統計』の授業を受けておくと後々楽」とアドバイスした。

 

 

 

文Ⅲ→教養学部教養学科超域文化科学分科文化人類学コース

 

人間の「よりよい」生き方を模索する

 

高橋智志(たかはし・さとし)さん

 

 中学生の頃から世界各国を回り、異文化理解に関する論文を執筆した高橋さんは教養学部の推薦生として入学。学校推薦型選抜の場合は出願時に希望の学部・学科・コースを提出する必要があり、現在の進学先を決定したのは高3の夏。人間の営みや他者との関わりに関心を持っていたことから、文化人類学コースを選んだ。

 

 前期教養課程では文化人類学に関する授業を積極的に受講。「初年次ゼミナール文科」では文化人類学を専門とする田辺明生教授の下、後期課程での研究の練習ともなる、フィールドワーク中心の学習を行った。

 

 文化人類学は「人間の『よりよい』生き方を模索する学問」。文化人類学コースではゼミ形式を中心に授業が展開される。アメフト部に所属する高橋さんにとって、ゼミ中心の後期課程の授業と部活の両立は大変だった。3年次は授業の予習やレジュメ作成などの課題に毎日4時間以上を費やしたという。「その分自分の意見を他者と共有し議論する授業は面白かった」と話す。

 

 「ニッチなテーマについて真剣に学べることも魅力」。コースの必修である「フィールド演習」の授業では、アマビエをテーマに研究を進めた。神戸の小学校でのフィールドワークを通じ、アマビエと人間の関わりについて考えたという。

 

 文化人類学コースは人数が少なく、アットホームな雰囲気で自分の学びたいものを自由に学べる。コロナ禍の影響で薄かったコースとしてのつながりも、対面授業再開に伴い徐々に強くなっているという。

 

 幼い頃から桜に興味を持っていた高橋さん。現在は日本の桜と人間の関係を中心に、人間と動植物が織りなす関係性の捉え方について研究を進める。桜で有名な国立などでフィールドワークを行う計画だ。

 

 コースからは毎年10人弱の卒業生が輩出されるが、大半は就職を選択し、院進する学生は2人程度だという。高橋さんは院進する予定。文化人類学に対する「もっと知りたい」という熱い思いを原動力に、研究内容を深めていく。

 

 

 

理Ⅱ→教養学部統合自然科学科統合生命科学コース

 

ミクロな視点の生物学

 

岩崎朝(いわさき・あすか)さん

 

 入学当時から生物、特に人体の仕組みに興味があった。そのため、理学部生物学科や、教養学部統合自然科学科統合生命科学コースを志望し、進学選択に臨んだ。

 

 統合生命科学コースでは3年次の1年間を通して実験が行われる。タンパク質の動きの速度の計測などミクロな視点を扱うことが特徴だ。数学や物理化学、生命化学など広範な内容が登場することもあり「前期教養課程の理系の授業はしっかり受けておいた方が良いです」。実験は細かい作業の繰り返しが多く、理論を学ぶ楽しさとは異なる苦労を経験した。実験に加え、週2こまほどの授業が必修となる

 

 統合自然科学科では、必修以外は学科内の他コースの授業から選ぶこともできる。そのため「進学したコースで扱う内容が自分の興味とずれていたとしても苦に感じることは少ないのではないか」と語る。

 コースは20人弱。授業後に教員と話をする学生もいて「教員に顔を覚えられる」距離感。LINEグループや実験を通した同期との交流はあるが、上下の交流は少ない。女性の割合は「17人中3人で少ないです」。

 進学先以外の同一コースの授業を24単位以上取得すると、副専攻として修了を認められることも特徴の一つだが「それにこだわっている人は多くはなかったです」。岩崎さんはスポーツ科学サブコース(23年度進学生から進学選択の定数を設けたコース)の授業を多数履修した。遺体を用いて行われる集中講義の「解剖学実習」が印象に残ったという。

 

 4年次からは所属する研究室での活動が中心となる。取り扱う分野は分子生物学から物理学系まで幅広い。実験の頻度なども研究室によって異なり、忙しさは人それぞれだ。岩崎さんは筋肉について扱う研究室に所属し、現在は週1回のミーティングを通し卒論のテーマ決めを行なっている。

 

 卒業後は院進し、所属する研究室での研究を続ける学生が多い。岩崎さんもその一人だ。「今の研究が自分に合えば、それを生かせる職に就きたいです」

 

 

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