6月から手続きが始まる進学選択。後期課程のイメージができず、志望先を決めかねている2年生も多いだろう。本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。4年生が経験した3S1タームと3A1タームの時間割も掲載している。進学先決定の一助としてほしい。(構成・石橋咲、佐藤健、取材・清水央太郎、松本雄大、金井貴広)
文Ⅰ→法学部第1類
困難は助け合い、各々の学びを深める
法曹を志したのは小学生の頃。公立中高を経て、大学受験時になっても変わらなかった夢をかなえるべく文Iに入学した。前期教養課程では、司法試験予備試験受験のためダブルスクールをするのではなく、学際的に学んだり授業の合間を縫って教職課程を履修したりするなど、第2・第3の刃をより深く研ぎ澄ます道を選んだ。
進学選択の際もその方針を変えず、法曹志望者の多い第2類ではなく必修が少なめで履修の自由度が高い第1類を選択。もっとも「法学部のコースごとの違いは必修科目以外にはあまり無い」ようにも感じた。
俗に「法学部砂漠」とも呼ばれる法学部の人間関係は「大きい授業だけだとかなりキツい」と語る。特に2、3年次はコロナ禍でほとんどオンライン授業だったことも重なりその傾向は強かったという。本年度は対面授業の再開でロビーやラウンジなどでの交流が増えるなどプラスの変化もあった。人間関係でメインとなるのは、やはり少人数のゼミ。教員も交流の場を持たせてくれるという。印象に残った授業として挙げたのは、橋爪隆教授の「刑法第2部」。逆井さんは民事法に比べて条文数が少ない刑事法が好きで、授業の密度の濃さと時々垣間見えるユーモアが魅力だという。
3年次の授業はほぼ試験一発。さらに予習で大量の文献を読む必要のある必修科目の負担は特に重く、真面目に取り組まないと単位を落とすことも少なくない。その際に助けとなるのが豊富にあるシケプリ。シケ長と呼ばれるまとめ役が科目ごとに担当者を割り振り、授業のまとめを作成する。単位取得が困難を極めるからこそ、相互に助け合うシステムは充実している。
法曹志望の多い第2類とは異なり、第1類や第3類は民間企業や国家公務員を志望する学生が多い。法学部生で構成される学生団体が主催するイベントなどもあり、進路に関する情報は豊富だという。逆井さんは法曹を目指す予定だが、第1類で得た幅広い知識と経験は必ず生きると信じていると語る。
文Ⅱ→経済学部経済学科(※4年次より経営学科)
2年間のゼミでの実践的な学び
両親から勧められ、2年次の夏に公認会計士の資格、就活などを見据え勉強を開始。経済学部に会計学を専門とするゼミがあり、経済学部経済学科に進学した。
経済学部は「良くも悪くも楽」だという。法学部や理系の学部に比べ単位の取得や必修の多さの面で大変ではなく「手を抜くこともできる」。その分自由に時間を使え、インターンや就活に精を出すことや、他学部の授業も14単位まで卒業に必要な単位として認められるため、興味のある他分野の授業を多く履修することも可能だ。「積極的に自分から物事に取り組める人ならば良い環境だと思う」と昨年を振り返る。
演習(ゼミ)制度が整っていることも特徴だ。3年次から2年間同じゼミに所属し、週1回教員から直接指導を受けられる。コロナ禍で学部内の交流はあまりなかった中、オンラインながらゼミが交流の機会を担保していた。
自身のゼミの担当教員である首藤昭信准教授の「管理会計Ⅱ」は利益の質や契約理論といった専門的な会計学の知識を体系的に学べる数少ない授業。「会計士の資格勉強では学べない会計学のアカデミックな部分を知ることができ、非常に興味深かったです」。首藤ゼミでは日経STOCKリーグに参加。独自の投資テーマをもとに国内上場株式等をスクリーニングして投資対象を絞り、バーチャル投資を行い、実践的に会計・金融の仕組みを学んだ。
各学科は指定される選択必修の範囲以外に違いがなく、一度だけ転学科が認められる。舟城さんも2、3年次に履修した授業の都合により4年次に経営学科に転学科した。卒業後の進路について、公認会計士の資格を取得後、監査法人に入って業務経験を積み、最終的にはベンチャー企業のCFOとして活躍することを一つの道として考えている。「中学、高校、大学の友人たちと会社をつくれたら楽しそうですね」。周囲には外資系金融や外資系コンサルを志望する学生が比較的多く、それらの職業に就く先輩が多いゼミを選択する傾向がある。
文Ⅲ→文学部人文学科社会心理学専修
広がる研究対象 真面目な仲間と
社会的場面での状況や環境に注目することで、人々の認知・感情・行動を研究する社会心理学。Aさんが興味を持ったのは東大入学前だ。学校で6年間同じ友人と接する中で、クラスなど環境が変わるだけで人の振る舞い方が変わり得ると感じ「集団の中で人がどう動くかに興味を持ちました」。前期教養課程でも「心理I」や「適応行動論」など社会心理学につながる授業を履修。「社会心理学で扱う範囲の広さを知り、興味の幅も広がりました」
後期課程に進学し「やりたいことをメインにできる環境が得られた」と語る。専修所属の教員が毎年交代で担当する「社会心理学概論」で、教員の研究概要を聞けるのが面白いという。特に「非人間化」と呼ばれる、戦時中の敵などに対して自身の攻撃を正当化してしまう現象が印象的だった。「社会心理学演習」では女性差別に関する論文も読み、入学時は想定になかったステレオタイプという研究テーマを得た。
一方で、研究手法の多くがアンケート調査になってしまうことには限界を感じた。文学部全体の傾向として「時間割に専修の授業の占める割合が大きくない」のも想定外だったと話す。3年次から卒業まで同一のゼミに所属して研究できることが多い他大学と比べると、演習に臨める時間が中途半端に感じることがあるという。「他分野も学べて私は面白いのですが、院進を考えている人は困るのかなと思います」
進学選択で求められる点数が高いためか、1学年20人程度が所属する専修には真面目な人が多く「質問したら、必ず誰かが答えてくれるような環境です」。何人かで遊びや忘年会に行くこともあるという。
卒業後は就職する人が多い。就職先は多岐にわたり、社会心理学を結び付けて考えている人は多くないとAさんは話す。「私は、本や漫画が好きという理由で出版社に就職します。社会心理学を結び付けるとしたら、ステレオタイプによる差別的な表現を出版物から減らしていければ良いなというくらいの感覚です」