進学選択

2022年6月27日

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(理学部・工学部編)

 

 6月から手続きが始まる進学選択。後期課程のイメージができず、志望先を決めかねている2年生も多いだろう。本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。4年生が経験した3S1タームと3A1タームの時間割も掲載している。進学先決定の一助としてほしい。(構成・石橋咲、佐藤健、取材・清水琉生、安部道裕、松本雄大)

 

理Ⅰ→理学部化学科

 

実験に浸って集中的に専門へ

 

今井渉世(いまい・しょうせい)さん

 

 実験の楽しさに引かれ中高時代から化学が好きだった今井さん。理I入学時から理学部化学科への進学を第一に考えていた。前期教養課程では、段階を追って化学を学べるように組み立てられているカリキュラムに従って授業を履修し、興味を深めながら進学後に向けての準備をした。2Sセメスターで取った「先進科学Ⅳα」の授業で生物分野への関心が強まり、一時は理学部生物化学科などへの進学も検討した。しかし、化学科でも生体分子の研究やタンパク質の研究ができることを知り、志望は変えず化学科へ進学した。

 

 2Aセメスターでは専門書に沿って有機化学を一通り学んだり、3年次からの英語で行われる専門の授業に慣れるため、その練習となる授業を受けたりした。3年次は最新の論文に掲載されるような難しい反応を扱うなど、座学と実験を通して集中的に化学に触れる。化学科は豊富な内容の実験をほぼ毎日行うのが特徴だ。予習からレポートまで負担は重く「大変ですがなんとかできました」と今井さん。卒業に必要な単位数に含まれない教職課程の授業も履修することができた。今井さんは印象に残った授業として3Sセメスターの「有機化学Ⅱ(構造論)」を挙げる。「有機化学を量子論を用いた見方で捉えることができ、考え方があまり得意ではなかった有機化学を好きになるきっかけになりました」

 

 化学科の人数は40人程度で「前期教養課程のクラスと雰囲気は似ています」。みんなで出かけたり、研究について先輩に話を聞く企画を立てたりしているという。昨年度の初めから対面授業が実施されていたため、隔てなく交流もできた。

 

 化学科の卒業生はほとんどが院進し、博士課程まで進む学生も少なくない。就職する場合、化学メーカーが多数だが、コンサルを選ぶ人もいる。今井さんは、現時点では博士課程も見据えて進路を考えている。現在取り組む、タンパク質工学を用いた生体分子の研究が興味に合致していることを生かし、研究を進めていくつもりだ。

 

 

 

理Ⅰ→工学部物理工学科

 

世界トップクラスの環境で充実した研究を

 

吉川大模(よしかわ・だいも)さん

 

 高校で大学教員の講演を聞いたことがきっかけで物理学に引かれ、理Iに入学。進学選択では、応用より基礎物理に興味があったため物理工学科へ。物理工学科は工学部に属しながら、理学部のように基礎物理学を重点的に学ぶ。工学やそれ以外の分野にも視野を広げられ、環境問題やジェンダー問題など、物理と人間社会の関わりについて考えるようになったと話す。

 

 進学して驚いたのは優れた研究環境だった。「研究設備や先生方は世界トップクラスで、ここよりも良い環境を探すのは難しいと言われるほどです」

 

 学問に対して熱心な学生が多く、教員も研究熱心で、常にモチベーションを高められる雰囲気だ。学科内での交流も多く、例年進学内定後に合宿を行っている。

 

 特徴的なのが自主ゼミだ。扱う内容はさまざまで、計数工学科の学生と一緒に開くこともあるなど分野の幅が広く、物理だけでなく工学に深く関係するテーマのゼミからヴィトゲンシュタインの本を輪読するゼミまであるという。

 

 学びの場は本郷キャンパスにとどまらない。4年次で研究室に配属され卒論に取り組むが、約3割の学生が柏キャンパスで研究を行う。理化学研究所で研究する教員もいるため、学部生のうちから理研で研修生として研究に参加する学生もいる。「特に理化学研究所は『科学者の自由な楽園』と呼ばれるほど研究環境が整っているので、そこで研究に携われるのは貴重な経験だと思います」。学部生ながら最先端のテーマを研究でき、卒業研究が科学雑誌『Nature』に載ることもあるのだと話す。

 

 約半数が博士課程まで進む。その後はアカデミアに残る学生もいるが就職する人が多い。数学や物理の基礎を学ぶことで汎用性の高いスキルが身に付くため、卒業生は半導体メーカーから金融までさまざまな分野で活躍しているという。吉川さんは「研究を長く続けたいと思っています。海外で大学院生やポスドクになることも視野に入れています」

 

 

 

理Ⅰ→工学部システム創成学科Cコース

 

幅広く学ぶ中から見える多様性

 

金柿日菜子(かながき・ひなこ)さん

 

 高校時代に物理と化学に面白さを感じ理系を選択。理Iに入学した。

 

 入学後は経済学やプログラミングなどに関心を持ち、進学選択では経済学部、工学部計数工学科、工学部システム創成学科Cコース(以下、シス創C)で迷った。最終的には経済学と技術開発をバランスよく学べる点からシス創Cに決めた。

 

 シス創Cは所属教員の専門が幅広く、2Aセメスターでは学科の限定選択科目として「材料力学1・2」や「プログラミング基礎」、「ビジネス入門」など工学系から社会科学系まで多種多様な授業を履修でき、文理両方の素養を持つ「エグゼクティブエンジニア」の育成を目指す学科の特色がよく表れた科目構成となっている。カリキュラムの中心にはプロジェクト演習があり、タームごとにテーマを選択し、グループ単位で研究発表をする。金柿さんは2A2タームで松尾研究室のプロジェクトに参加し英語で機械学習の基礎を学んだ。「グループワークが多く、対面授業が少ない時に知り合いを作れたことも良かったです」

 

 専門課程においても横断的に学べることから、特定分野の学問を扱う学部や学科に比べ、専門性が低くなるのではという懸念もある。「導入からやや応用程度までで終わってしまう授業が多く、そこから先は他学部聴講や本を読み自発的に学ぶ必要はあります」と3年次を振り返って語った。

 

 ビジネス業界とのつながりが強く、実務経験のある外部講師などを通じて社会課題に触れる機会が多いのも特徴だ。3Aセメスターで履修した「物流・交通システム計画応用」という授業では、ラストワンマイル物流など、現在の物流業界の課題やトレンドについて学んだ。

 

 卒業後は学部就職よりも院進する割合が高く、多くの学生は修士課程修了後に就職を考えている。就職先の業種はIT系以外にもコンサル、金融、商社など多岐にわたり、金柿さん自身も大学院修了後の就職は技術職ではなく文系就職を考えているそうだ。

 

 

 

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