学術ニュース

2024年10月18日

渡来系弥生人の人骨から渡来人の主要なルーツを解明

 キム・ジョンヒョンさん(博士1年)と大橋順教授(ともに東大大学院理学系研究科)の研究グループは、東邦大学医学部の水野文月講師、土井ヶ浜遺跡・人類学ミュージアムの松下孝幸館長らと共同で、東アジア系と北東アジア系のゲノム成分の両方を持つ集団が弥生時代にユーラシア大陸東部から日本列島に渡来し、縄文人と混血して現代日本人の祖先集団となったことを明らかにした。成果は『Journal of Human Genetics』に掲載された。

 

 本土日本人(アイヌ・沖縄集団を除く。以下「日本人」)が縄文人と渡来人の混血集団の子孫であるという説は広く支持され、現代日本人のゲノムの8割以上を東アジア系と北東アジア系の成分が占めていることが知られていた。しかし、これらの成分を日本人がどのように獲得したのかについては十分に理解されていなかった。

 

 今回の研究では、山口県の土井ヶ浜遺跡から出土した渡来系弥生人の人骨からDNAを抽出し、全ゲノム配列解析を行って得られたデータと縄文人や古墳時代人、現代日本人、東アジア系および北東アジア系集団のゲノムデータを用いて統計分析を行った。この分析により、土井ヶ浜弥生時代人が現代日本人と同じく縄文人、東アジア系集団、北東アジア系集団に特徴的なゲノム成分を持つことが示された。また、土井ヶ浜弥生時代人は遺伝的には古墳時代人に最も近く、次いで現代日本人、古代韓国人、現代韓国人の順に近いことが確認された。次に、東アジア系と北東アジア系の両ゲノム成分を持つ現代韓国人を日本列島に渡来した集団だと仮定し、その集団が縄文人と混血したというモデルを統計学的に評価したところ、このモデルによって土井ヶ浜弥生時代人、古墳時代人集団、現代日本人集団のゲノム成分をうまく説明できることが明らかになった。

 

 これらの結果は、渡来人が東アジア系と北東アジア系の両ゲノム成分を持つ東アジア起源の集団であり、この集団が弥生時代に朝鮮半島から日本列島に渡り、縄文人の集団と混血して日本人の祖先となったことを強く示唆している。渡来人の主要なルーツを解明した本研究により、日本人集団の形成過程に対する理解が深まることが期待される。

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