学術ニュース

2019年11月5日

光を当てるだけで水素放出 軽量で安全な貯蔵・輸送に期待

 河村玲哉さん(東京工業大学大学院修士2年)、松田巌准教授(物性研究所)らの研究グループは、ホウ素と水素の組成比が1対1から成るホウ化水素シートに、室温・大気圧下において光を当てるだけで、水素を放出できることを発見した。爆発のリスクがある高圧水素ボンベに代わる軽量で安全な水素の貯蔵・輸送が期待される。成果は10月25日付の英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載された。

 ホウ化水素シートは元々理論的に存在が予測されており、2017年には初めて室温・大気圧下で合成に成功。質量に対する水素の密度が8.5%と、従来の2%より高いことから、軽量で安全な水素キャリアへの応用が期待されていた。他の有望な水素キャリアとしては、質量に対する水素密度が6.2%のシクロメチルヘキサンという物質も存在したが、水素放出には300度以上の加熱が必要なことが難点だった。

 電子を結合性軌道(分子の結合を強める)から反結合性軌道(分子の結合を弱める)に遷移させることで、水素を放出できる。研究グループは理論上、この遷移は紫外線によって引き起こされると予想した。今回、可視光と紫外線の2種類の光源をホウ化水素シートに照射して、放出されるガスを分析。紫外線の照射で水素が放出されることを確認した。その水素生成量はホウ化水素シートの質量の8%に当たることも明らかになった。

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