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2019年11月1日

文部科学省、英語民間試験利用を24年度以降に延期(順次関係者のコメントを追記)

 萩生田光一文部科学大臣は1日、2021年大学入試共通テスト(2020年度実施)での英語民間試験利用を見送り、2024年度からの利用を目指すと発表した。「受験生が経済状況や居住地域にかかわらず、安心して受験できるようにするためには、さらなる時間が必要」と説明。東大の本部入試課は1日15時40分時点で、本紙の取材に対し「東大への正式な通知を待ってから対応を検討する」としている。

 

※萩生田大臣のメッセージや、会見の様子はリンク先から

 

英語民間試験利用をめぐる経緯

 

 2017年11月、国立大学協会(国大協)が民間試験を全国立大学の一般入試で課す方針を決めた。しかし不透明な成績認定基準などへの懸念から、2018年5月には教養学部英語部会内から五神真総長に申し入れを行うなど、東大内で民間試験への反発の声が上がった。

 

 2018年4月には東大の入試監理委員会が、ワーキング・グループ(WG)の設置を決定。WGは2018年7月、出願時に民間試験の成績提出を求めない方針を最も優先順位の高い案とした答申を発表した。

 

 2018年9月20日には五神総長が林芳正文部科学大臣(当時)と会談。これを受け入試監理委員会は、民間試験の利用に大学が責任を持てそうだと判断し、2018年9月25日、民間試験の成績を必須の出願要件としないことを決定していた。

 

 

関係者のコメント(順次追記)

 

●今年6月に英語民間試験の利用中止を求める署名運動を呼び掛けた、羽藤由美教授(京都工芸繊維大学)

 

「(今年10月下旬のテレビ番組での)萩生田大臣の失言を機に経済格差や地域格差の問題が露呈したことで、英語民間試験利用に対する批判の声が高まり、延期されたのだろう。しかし、経済格差や地域格差が解消されても、複数の民間事業者に試験の運営を丸投げすることに起因する問題は解決されない。延期ではなく撤回すべき」

 

 

●署名運動に参加した、東大の元理事・副学長(入試担当)の南風原朝和名誉教授(前・高大接続研究開発センター長)

 

 「11月1日は大学入試英語成績提供システムの共通ID発行申込みの始まる日だった。しかしこの日までに、受験者がどの試験を、いつ、どこで受けられるかを、明確に示せなかった。これが、延期の発表が今日になった理由だろう。

 

 萩生田大臣の失言により経済格差や地域格差に注目が集まったことについては、それが国会議員にとって指摘しやすい問題だったのだろう。

 

 私は2年半ほど前から、複数の民間試験のうちどれを受けても良いという仕組みが測定論的に乱暴であることを指摘してきた。各民間試験間のスコアの比較が難しくなるからである。また、この仕組みでは受験者の数の事前把握が難しくなる。これが、民間試験の事業者が十分なキャパシティの会場を用意するのが間に合わなかった原因であり、延期の直接の理由だと思う。この制度の問題点については、私が編集した『検証 迷走する英語入試』(岩波ブックレット、2018年)に書かれている他、2017年6月の時点で,国立大学協会が懸念を表明している。これから抜本的な見直しをするとのことなので、ぜひ、これらの問題点の一つ一つについて、丁寧に検証してほしい」

 

●署名運動に参加した、英文学が専門の阿部公彦教授(人文社会系研究科)

 

 11月1日に突然、民間試験利用延期が発表された理由について、大手紙の報道などでは「官邸が萩生田大臣の失言に対する世論を気にした」となっている。しかし、この政策はもともと官邸が主導したもので、文部科学省は「やらされていた側」と考えるべきだと私は考える。官邸としては「何やってるんだ文科省」と責任を押しつけたいのだろう。

 

 おそらくこのまま民間試験利用を強行していても、早晩大きなトラブルが起きて、もっと面倒な事態になっていたと思う。遅くなればなるだけ被害が大きくなったはず。もっと早くやめるべきだったし、実態を知れば誰がどう見ても「おかしい」ので、なぜもっと早く止められなかったのか、と不思議でならない。

 

 民間試験利用は、現在クローズアップされている「格差・公平さ」といった問題点に加えて、もっと根深い構造的な欠陥を持つ。試験の民間委託は、結局、教育が「採算重視」の論理に乗っ取られるということを意味するからだ。受験生や教育システムのことより、企業の利潤が優先されるのは問題だ。


【記事追記】

2019年11月1日20時10分 南風原名誉教授のコメントを追記しました。

2019年11月2日00時01分 南風原名誉教授のコメントを修正しました。

2019年11月6日11時1分 阿部教授のコメントを追記しました。

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