鈴木剛特任研究員(物性研究所)らは、原子1層分の炭素のシートであるグラフェンを30度ねじって2枚重ねた準結晶状態で、質量を持たない電子の状態変化の直接観測に成功した。観測の結果、電子が質量ゼロのまま、100万分の1ミリメートルにも満たない2層の間に10兆分の1秒間で30ミリボルトの電圧が発生することが判明。超高速に巨大な電場を生み出せるため、無線通信の高速化への応用が期待される。成果は7日付の米科学誌『ACSナノ』(電子版)に掲載された。
グラフェンは伝導性や強度に優れ、伝導電子の質量がゼロに相当する特殊な性質から、大規模通信を行う次世代光デバイスの材料として期待されている。炭素原子の層を重ねると電子に質量が生じることが課題だったが、2018年、30度ねじって重ねると特殊な準結晶状態になり、電子の質量をゼロに保てることが判明。一方、デバイスへの応用には、2層の間を移動する電子の制御が必要だ。
今回は、紫外線より波長が短い光を発射する物性研究所開発のレーザーをグラフェンに照射し、質量ゼロの電子の状態変化を測定。30度ねじって重ねたグラフェンで、超高速で巨大な電場が発生した。照射する光の波長、強さを変えれば、2層の電子の質量をゼロに保存したまま電流・電圧を超高速で制御することも可能となる。
この記事は2019年10月22日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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