中高生に対話の場を
UTSummerは、年に1度、中高生を対象に3泊4日のサマーキャンプを開催する団体。「アットホーム」と「非日常」が共存する檜原村のコテージで、参加者は体験活動・ワークショップ・グループ対話を通し、自己分析や他者理解を進める。1日だとお互い踏み込めず、長過ぎても本音で話せない。「行きずりの4日間がちょうどいい」と創設者の塚原遊尋さん(養・3年)は語る。
塚原さんは高校時代、自分を「作っている感じ」がして、楽しいが自分の居場所はここではないという違和感・閉塞感を抱いていた。昔の自分のような高校生が「キャラを演じる」ことを気にせず話せる場をつくりたいと、17年にUTSummerを立ち上げた。
メインプログラムのグループ対話では、大学生2人と中高生5人でグループになり「音楽をなぜ聴くのか」などのテーマに沿って自由に発言し合う。誰もお互いを否定せず、テーマから離れた発言をしても構わない。大学生の役割は「補助線を引く」こと。参加者の発言を踏まえて新たな視点を加えたり、話を掘り下げる方向を決めたりする。ただしこの時間はあくまで練習。運営側が考える「本番」は自由時間だ。対話を楽しいと思ってもらい、自由時間に自然発生的に対話が始まるのが理想だそう。
対話の目的である自己分析と他者理解はともに、学校でのキャラに縛られた人間関係の中ではなかなかできない。キャンプでの対話を、自分を見つめ開き直る場、自分と他人との違いに気付き人間関係を捉え直す場にしてほしいという。
何よりうれしいのは人として彼らを知ったり、今までやってきたものが形になったりすること。アンケートを通し、自分たちの思いが届いたと知るのも感慨深いそう。この4日間で参加者の問題は必ずしも解決しないため無力感を抱くが「自分と向き合ってくれた人がいる」と思ってもらうことで「何かしら彼らの力になれたらうれしいです」。
一方で難しいのは安全面。学生なので一層信用が問われる。教師1人に引率を頼み、広報では高校に出向き説明することも。ホームページに当日日程を載せ、安全マニュアルも作成。後援団体の存在も、信頼の確保を後押ししている。また、大学生になったことで忘れてしまった感覚を思い出すことも大変だという。しかし「中高生が自分の悩んでいる問題を言語化し向き合うしんどさを僕らは知っているので、力になりたいです」と語る。
たった4日間のために全力を注ぐ。何度も何度も語り合い、より良いものを目指し続ける。決して現状に満足せず歩み続ける彼らには「妥協しない」という言葉がよく似合う。
(西森優)
◇
部員約24人。
この記事は2019年9月24日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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