就活の面接では、コミュニケーションを円滑に進めることが大切だ。経団連によるアンケートでは、「コミュニケーション能力」が「企業が学生に求める力」として毎年1位に挙げられる。就活に必要なコミュニケーション能力とは何なのか、どうすれば身に付けられるのかを、実際に面接官を行いながら内定獲得のサポートを行う「就活予備校プレビズ」の担当者に聞いた。(取材・田辺達也)
内容より「伝え方」で勝負が決まる
面接におけるコミュニケーション能力とは「どのような形式の面接でも、自分の考えや言いたいことを分かりやすく伝える力」だと話すのは、就活予備校プレビズ事業部コーチの星友梨さん。一言で面接といっても、その形式は一通りではない。企業側の担当者が就活生に質問し、就活生がこれに答えていくという時もあれば、就活生が企業に逆質問していく質問力が問われる場合も考えられる。
「コミュニケーション能力はある・ないの二択で測れるものではありません。また面接では、『他の人の話と比べてどうだったか』という観点でチェックされることが多いでしょう」と星さん。だからこそ、想定される質問とその答えなどの準備を、周囲の人間より進めることが重要だ。「面接の時間は平均20分程度と意外と短いです。その中で面接官から聞かれる内容はある程度想定できますから、必ず準備をしておきましょう」
同事業部コーチの小野千尋さんは、「会話を進める過程で、『相手がどのような返答を想定しているか』を考える力も大切だ」と話す。特に面接においては、ただ面接官の問いに答えるだけでは相手の意図を満たしたとはいえない。「なぜその答えになるのか、どうしてそのように考えたのかのプロセスこそ、面接官が本当に聞きたいことです」。日常会話から相手の意図を汲み取る癖をつけることが、良い会話を生み出すこつだという。
面接で話す内容を想定するにあたって、必ず必要になるのは「話のテーマ」だ。留学経験やサークル活動の体験などをテーマと想定して面接に臨む就活生もいるが、「テーマの内容自体より、その中で“あなたの良さ”が端的に伝わるかの方が大事です」と星さんは話す。例えば留学経験があれば、その活動を通じて成長したことなどを面接官に納得させなければならない。話すテーマに苦しむ就活生は多いというが、伝え方で勝負が決まると割り切る方が賢明だろう。
「相手の質問の意図を汲んで話すこと自体が、東大生のみならず学生全体の苦手とするところです」と星さん。面接対策も、イメージトレーニングや机上での想定だけではどうしても不足になる。印象に残る話をできるかどうかを、「人対人」で練習する経験を積む必要があるという。
面接官に伝わる話し方とは?
面接本番でコミュニケーション能力が高いと採用担当者が思う人とはどのような人なのか。「大前提として、面接に向けて周到に用意してきている人」だと星さんは言う。志望理由をはじめとして、話すべきことを過不足なく整理して面接に臨んでいることが伝われば、会話がうまく進むはずだ。加えて、表情の豊かさや礼儀正しさなどに気を付ける人も評価が高くなる。
逆にコミュニケーションがうまく成り立たない人に多いのは、「自分の言いたいこと・用意してきたことだけ言って帰ったな」と思われてしまうことだ。面接の場では初対面同士。立場の違いをわきまえ、相手の知りたい事に応える会話を心がけたい。
また小野さんは、他の学生でも言えるような具体性のない回答ではなく、特徴のある内容を語る方が印象は良くなると話す。「私はコミュニケーション能力がある、主体性があると言われても、その人の魅力は伝わりません。『コミュニケーション能力』や『主体性』といった抽象語を、身に付けた経緯や生かしてきた場面などを交えて具体的に自分の言葉で説明できる人は、相手に良い印象を与えられます」。特にコミュニケーション能力は、話し方で面接官にはどれほどの力があるかが分かってしまうので、あえて話の内容に取り上げる必要はないだろう。
せっかく円滑に面接が進んでも、不用意な一言で印象を落としてしまうこともある。星さんは一例として、「話に一貫性がなくなった時」を挙げる。特に就活の軸をきちんと持っていない人は、ふと不用意な発言をしてしまうことが多い。「志望理由に関して、『こういう仕事をしたい』というぶれない意志を持って、だから御社がいいとつながらないと、危険ですね」。面接を受ける企業を決めたら、それらの企業に共通する特徴を考えておくとよいだろう。
企業の面接官にとって新卒採用の基本は「将来的に活躍する潜在能力を持つ人材の選別」だ。積み重ねてきた経験が、今後の仕事につながるということを十分にアピールしつつ、想定外の質問を受けても動揺しない心構えをしておきたい。
「コミュニケーション能力は、社会で一番必要な能力と言ってもよい」と星さんと小野さんは口をそろえる。コミュニケーション能力を十分に発揮するために、面接に臨む際には聞かれ得る質問を想定し、綿密な準備を心掛けよう。
この記事は、2016年3月22日号(就職特集号Ⅰ)からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。紙面はこちらのページでご購入いただけます。
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