その激しさ故に「水中の格闘技」とまで称されるスポーツ、水球。日本での認知度は低く、競技人口は数千人にとどまると言われている。そんなマイナースポーツの名を耳にする機会が増えてきている。理由は32年ぶりのオリンピック出場だ。
~新戦術による悲願達成~
2015年12月、歓喜の瞬間は訪れた。中国・佛山で行われたアジア選手権で水球男子日本代表が優勝し、悲願であったオリンピック出場を決めたのだ。この大会、日本のライバルは前回大会決勝で敗れたカザフスタン、そしてロンドン五輪予選で敗北を喫した中国だった。この二ヵ国に勝利し、さらに世界で戦うために日本チームが取り入れた戦術が「パスライン・ディフェンス」だ。日本代表がオリンピック出場を決めた後に多くの報道でも伝えられたように、この戦術はこれまでの常識を覆す型破りなものである。通常は相手選手と自陣ゴールの間、つまりシュートコースでディフェンスする。
しかし、この戦術ではボール保持者と相手選手の間、すなわちパスコースをふさぐようなディフェンスを行う。この戦術の利点はパスカットが多く起きる点、そして相手選手よりも速く攻撃に転じることができる点だ。体格で海外の選手に劣る日本チームにとっては、スピードで勝負できるこの戦術と相性が良い。一方でこの戦い方では相手選手と自陣ゴールとの間にスペースを空けることになるというリスクもある。このスペースにボールを落とされるとゴールキーパーと相手選手とが一対一で向かい合うことになるからだ。選手にこの戦術を伝えた当初は反発も大きかったというが、チームで話し合いを重ね、リスクを覚悟の上で「パスライン・ディフェンス」を4年間かけて磨いてきた。その結果、カザフスタンを一点差で、宿敵・中国は6点差で撃破しオリンピック出場権を獲得したのだ。
~オリンピックでの戦い~
リオオリンピックの出場国、予選リーグの組合せはすでに決定しており、日本はグループAに所属している。同じグループにはオリンピック三連覇の経験を持つハンガリーや昨年の世界選手権覇者セルビア、同じく世界選手権3位のギリシャ、さらには昨年のワールドリーグ3位のブラジルと、強豪国がひしめいている。世界の強豪国を相手に日本の戦術がどこまで通用するのか。それを試す絶好の機会が今年の5月、そして6月に訪れた。FINA水球ワールドリーグの予選に当たるインターコンチネンタルトーナメントが5月に神奈川で、そして本戦のスーパーファイナルが6月に中国で行われたのだ。予選ではオリンピックで同組のブラジル、オーストラリアやアジアのライバルである中国やカザフスタンと対戦。ブラジルやオーストラリアには敗れはしたものの点差は1点や2点。中国とカザフスタンには10点以上の差をつけて勝利した。更に本戦の7・8位決定戦ではブラジルに5点差で勝利するなど、大きな収穫を手にしている。リオオリンピック本番では、日本代表・ポセイドンジャパンがどこまで躍進するか、注目を集めている。
東京大学運動会水泳部水球陣
山田直人
【団体のホームページ・SNS】
ホームページ(http://www.tousuikai.net/HP_waterpolo/)
Twitter(@tokyounivwp)
【リオ五輪企画】
【東大フェンシング部寄稿】リオ五輪「フェンシング」の見どころ
【東大ハンドボール部寄稿】リオ五輪「ハンドボール」の見どころ
【東大バスケットボール部寄稿】リオ五輪「バスケットボール」の見どころ