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2016年8月21日

東大のジェンダー問題で東大生にアンケート 「問題は深刻か」の回答に男女差

 5月、学生団体「東大美女図鑑」と旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)の「女子学生が飛行機で乗客の隣に座って過ごす」企画が発表後、「セクハラ」などの批判で即日中止された。3月にも性別などで東大生の加入を制限する学生団体に本部学生支援課が改善を喚起するなど、東大生のジェンダー的な問題が目立つ。東京大学新聞社は東大生にアンケートを実施し135人の回答で東大内のジェンダー的な問題を探った。(構成・太田聡一郎)

 

 ※アンケートは全て6月13~17日に東京大学新聞社がインターネット上で実施。n=135(男子学生86人、女子学生49人)、数値は少数第2位を四捨五入。

 

【関連記事】

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「加入制限する理由ない」他大女子限定サークルを約8割が問題視

Figure1

 

 東大男子と他大女子のみが加入できる学生団体の存在など、東大の学生団体の在り方を「改善すべき」「問題はあるが、改善する必要はない」と問題視した学生が合わせて約8割を占めた(図1)。「改善すべき」理由には「東大男子や他大女子が入れるのに東大女子の加入を制限する正当な理由がない」と制限を差別と捉える声が多数。「問題はあるが、改善する必要はない」とした人からは「ジェンダー的な問題がないとは言えないが、勧誘する側には入れる人を選ぶ権利がある」など、ジェンダー問題よりサークル運営の効率を重視する意見が聞かれた。「規制を加えても地下化するだけ」「仮に東大生女子も入れるようにしたところで、そこに入った東大女子は居心地が悪い」など改善の必要性は認めつつも、実効性を疑問視する声も多かった。

 

 全体の14・8%は「問題はない」と回答し、「学生団体の多様性を制限するべきではない」「性別の制限で育まれた独自の文化もあるはず」と学生団体の自主性を重視。男子学生では「同種の学生団体で東大女子が加入できるものもある」など制限を擁護する意見が多かった。一方女子学生からは「特にスポーツ系で、女子が入れる学生団体が限られている」との回答があり、認識の違いが見られた。

 

「東大美女と旅行」企画は「女子大生を売りにしすぎ」「同意があれば問題ない」

Figure2

 

 「東大美女図鑑とHISの企画にジェンダー的な問題があったか」との問いには「ジェンダー的な問題、それ以外の問題両方があった」と回答した人が33・3%、「ジェンダー的な問題はあったがそれ以外の問題はなかった」が12・6%、「ジェンダー的な問題はなかったが、それ以外の問題があった」が34・1%で、何らかの問題があったという意見が8割に達した(図2)。「女子学生であることを売りにし過ぎている」などジェンダー的な問題を指摘する回答があった一方、「性別を売りにした職業は他にもあり問題ない」「本人たちが参加を承認しているなら『セクハラ』の批判は不適当」とジェンダー的な問題と捉えない声もあった。

 

男子2割、女子4割が「東大のジェンダー問題は深刻」

Figure3

 

 「東大のジェンダー的な問題は深刻だと思うか」の質問に男子は回答者の2割弱が、女子は4割が「はい」と回答(図3)。一方で「いいえ」と答えた男女の割合は共に4割以上で、女子学生も一定数が深刻とは感じていなかった。

 

 「はい」と回答した人の多くは具体的な問題に「全学生に対する女子率が著しく低い」と男女比の不均衡を挙げた。「女子の割合が少ないためにメディアなどで面白おかしく取り上げられ、東大女子に対する偏見が再生産されてしまっている」と派生する問題の指摘もあった。「ジェンダー的な問題を問題と捉えない人がいる」と学生のジェンダー意識自体を問題視する意見も挙がった。

 

 ジェンダー的な問題を深刻と捉える人が一定数存在する以上、我々学生がジェンダー的な問題に無関係ではいられない。悩む学生は一部でも、東大生全員が考えるべきではないだろうか。

 

アンケートの自由回答 東大生はこう考える

 

 以下では、アンケートで集まった自由回答を紹介する。自身の立場と同じ意見はもちろん、異なる意見も読み、多様な視点から東大のジェンダー問題を考えたい。

 

(図1)「東大生の男子と他大学の女子のみが入れるサークルなど東大のサークルの在り方についてどのように思いますか」への自由回答

 

「改善すべき」と回答した理由

・東大の学内サークルなのに、東大の女子が入れず、他大学の女子が入れることを正当化できる理由が見当たらないから。

・特にスポーツ系のサークルでは、東大女子の選択肢が少なすぎるから。

・私は所謂「インカレテニサー」に所属しているのですが、私も含め、当事者であるインカレテニサーの構成員たち自身も、なぜこのような(記者註:他大女子は加入できて東大女子が加入できない)制度が存続しているのか疑問視しており、また男女平等の観点から不適切であることは明白であるためです。

 

「問題はあるが、改善する必要はない」と回答した理由

・(前略)いくら圧力や規制を加えたところでそれらの団体は地下化するばかりであり、結局は周囲の人間が距離を置く他ないと思う。

・ジェンダー的な問題がないとは言えないが、勧誘する側には入れる人を選ぶ権利があると思うから。こうした制限は大学のサークル勧誘まで持ち込む必要はないかと。

・このようなサークルは男女での機会の差別を生み著しいジェンダー問題を生んでおり、改善するに越したことはないが、あくまで各サークルの自由に思われる。喜ばしくないが興味もないしわざわざ改善しなくても良いというのが今の正直な気持ちであり、恐らく表面だってこの議論が紛糾しない以上多くの東大生は似たような思いを持っているだろうから、「改善する必要はない」というより「改善できなくても仕方がない」という考えである。

 

「問題ない」と回答した理由

・サークルの多様性を制限するべきではないと思うから。

・性別で限定することで育まれたサークル文化もあるはず。安易に非難すべきではない。サークルの自由だと思う。

・女子が例えばテニスサークルに全く入れないというなら問題だが、他に入れるテニサーもあるし問題はないのでは。

 

(図2)「セクハラなどの批判に代表されるようなジェンダー的な問題が、東大美女図鑑とHISとの旅行企画にあったと思いますか」への自由回答

 

「ジェンダー的な問題、それ以外の問題両方があった」と回答した理由

・ジェンダー的には、一般の女子学生を「女性」という性別を利用して商品にしようとしたところに問題があった。他方、「東大」と銘打てば売れると企画担当者に思われたようで、「東大生」を見世物のように扱おうとするところにも問題があった。

・企画の見せ方にも問題があった。

・企画自体意味不明。性別に関わらずエコノミークラスに長時間収容し話させるのは過酷。また彼女たちを守るような”炎上”をしたが、結果的に「女だから」企画が中止になってしまった。「女だから」企画した側も、「女だから」非難した側も等しく問題がある。

 

「ジェンダー的問題はあったが、それ以外の問題はなかった」と回答した理由

・「女子学生」であることを売りにしすぎている企画だと思うから。

・そもそも「美女」という概念によって女性を選別するという考え方に賛同しかねるため。

・女性が、それも「美女」と称してサービスを行うのは性風俗的なサービスを想起させる、と言われても仕方がないと思われる。男性もまざり、「美女」を強調していなければ問題なく受け入れられたのではないか。

 

「ジェンダー的問題はなかったが、それ以外の問題があった」と回答した理由

・双方の合意があって成立した企画である以上、セクハラという批判は当たらないと思う。ジェンダー的に問題があるとは思えないが、いかんせん企画が下品すぎたのではないかと思う。

・東大美女図鑑の清潔なイメージを崩壊させたという点でマーケティングの問題。

・「東大美女図鑑」は「東大女子は勉強しかできない、という印象を払拭したい」という目的を持った団体と認識していたが、この企画では東大美女はキャンペーンの景品扱いされている。もしこれが本人達の意向ならば問題は小さいが、もしSTEMSUT(記者註:東大美女図鑑を編集する学生団体)が斡旋した企画ならばジェンダー的問題になると思う。確実に存在する問題として、STEMSUTがこの件に関して一切の説明をしていないこと。次に、仮にも「東大」の名を背負ってキャバラクラ的行為を公的に行おうとしたこと(東大の尊厳に関わる問題とも思う)。そして、HISは炎上を予期できずに企画を実行しようとしたこと。

 

「問題はなかった」と回答した理由

・企画への参加に同意した女子学生だけが参加するのであれば問題はないと思うから。

・性を売りにする企画は他にもあり、特筆してこの企画が何か問題を抱えているとは思えない。もしこの企画を批判するのであれば女性性を特典とするあらゆる企画を否定すべきである。

 

(図3)「東大のジェンダー的な問題は深刻だったと思いますか」に対する自由回答

 

(「はい」と答えた人のみ回答)具体的な問題点、及びその改善方法

・そもそも学生、教員の両面で女性が少ないという点、および女子の博士課程での進学率の低さ。これは東大だけの問題だけでなく、国全体として、女性が活躍できる社会、女性が高い地位につける社会にしていかなければ根本的には変わらないと思う。

・HIS等の目立った企画に限らずとも、例えば工学部の教授が女子の存在がないかのような発言をしたりすることは日常茶飯事である。また、こういったジェンダー的な問題を問題として捉えている学生も少ないように感じる。過度に女子向けの企画をうったりする必要は無いが、例えばジェンダー論の講義のように、問題意識を持てる機会がもう少し増えれば、と思う。

・東大女子が入れないサークルが普通に受け入れられてるのは、意識感覚が鈍ってる気がする。自ら当事者になった時の気持ちを考えて!と啓発するポスターとかを貼るといいと思う。

・僕のように東大のジェンダー問題が深刻だと(識者や外部の人たちの指摘によって)認識しながらも、それを実感できていないような男子学生(女子学生も?)が多い事。

・女子の割合が少ないために、メディアなどで(まるで特別天然記念物のように)おもしろおかしく取り上げられ、東大女子のイメージに対する偏見が再生産されてしまっていると思う。

・女子の比率の異様な低さが不自然であり問題だと思う。しかし同世代には親世代に比べジェンダーの考えが普及しているところを見ると、同世代が親になる頃には自然と改善しているような気がする。バランスを整えるため、たとえ一時的であっても、入試の制度などで逆差別というか女子を優遇するような改悪はしないで欲しいと思う。

 


 この記事は、2016年6月28日号に掲載した記事の関連記事です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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