芦田裕也さん(工学系・博士2年)らは、窒素ガスと水を用いたアンモニアの合成に世界で初めて成功した。環境負荷が小さい手法のため、持続可能なアンモニア合成方法として注目される。成果は24日付の英科学誌『ネイチャー』(電子速報版)に掲載された。
窒素は医薬品や化学工業製品などに含まれる重要な元素だ。窒素ガスを窒素源として利用するにはアンモニアなどに変換する必要があるが、アンモニアを合成する現在の手法は、高温高圧の条件が必要となり、多くのエネルギーを消費する点で問題となっている。
そこで近年、自然界の酵素が常温常圧下で窒素ガスと水からアンモニアを合成する仕組みを模した、金属触媒を用いる手法が研究されている。しかし水素源として水ではなく酸性度の高い物質を使う他、強力な還元剤や高価な還元剤も必要で、実用化は困難だった。
芦田さんらは、水素源にアルコールや水を、還元剤には広く使われている「ヨウ化サマリウム」を利用。触媒に自然界の酵素にも含まれる「モリブデン」を用いると、常温常圧下でアンモニアの合成反応が速やかに進行した。この反応中の触媒性能は、従来の合成方法における触媒の10倍で、反応速度は従来の100倍。共に世界最高値を更新した。
今回の研究は、二酸化炭素を排出する化石燃料や貯蔵運搬が困難な水素の代わりに、アンモニアをエネルギーの媒体として用いる社会の実現にもつながる。